「最近、親の足腰が弱くなって家の中での移動が心配…」「手すりを付けたいけど、費用が気になる…」「介護保険で住宅改修ができると聞いたけど、手続きが複雑そう…」
そんな不安を抱えているあなたに朗報です。介護保険の住宅改修制度を正しく活用すれば、**最大20万円（自己負担1〜3割）**の支給を受けて、ご家族が安全で快適に過ごせる住環境を整えることができます。
この記事で得られるゴール
- 介護保険住宅改修の対象工事と支給限度額を完全理解
- 申請から工事完了まで、失敗しない手続きの流れを把握
- 悪徳業者に騙されない業者選びのポイントを習得
- 実際の費用相場と、自己負担を最小限に抑える方法を習得
- よくあるトラブル事例と回避策を事前に知る
介護保険住宅改修制度の全体像
制度概要と支給対象者
介護保険住宅改修制度は、要介護・要支援認定を受けた方が、自宅での生活を継続できるよう住環境を整備する際に利用できる制度です。
支給対象者
- 要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた方
- 改修する住宅に住所を有し、実際に居住している方
- 介護保険料を滞納していない方
支給限度額と自己負担
| 所得区分 | 自己負担割合 | 支給限度額20万円の場合の自己負担額 |
|---|---|---|
| 現役並み所得者 | 3割 | 6万円 |
| 一般所得者 | 2割 | 4万円 |
| 低所得者 | 1割 | 2万円 |
【専門家の視点】 住宅改修は生涯で1回20万円までという制限がありますが、転居した場合や要介護度が3段階以上上がった場合は再度利用可能です。また、この制度は償還払いが原則で、一旦全額を業者に支払った後、申請により自己負担分以外が返金される仕組みです。
対象となる住宅改修工事の種類
6つの対象工事カテゴリー
介護保険で認められる住宅改修は、以下の6種類に限定されています。
1. 手すりの取付け
対象箇所
- 廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路
- 階段の上がり端・下り端の水平部分
設置例と費用相場
| 設置場所 | 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|---|
| トイレ | L字型手すり1箇所 | 1.5〜3万円 |
| 浴室 | 縦型・横型手すり各1箇所 | 3〜6万円 |
| 階段 | 片側手すり3m | 4〜8万円 |
| 玄関 | 上がり框用手すり | 2〜4万円 |
2. 段差の解消
対象工事
- 居室、廊下、便所、浴室、玄関等の各室間の段差解消
- 玄関から道路までの通路の段差解消
- スロープの設置
注意点 昇降機、リフト、段差解消機等の設置は対象外です。
費用相場
| 改修内容 | 規模 | 費用相場 |
|---|---|---|
| 室内段差解消 | 5㎡程度 | 8〜15万円 |
| 玄関スロープ設置 | 2m程度 | 10〜20万円 |
| 浴室段差解消 | 浴室入口 | 5〜12万円 |
3. 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
対象工事
- 滑りにくい床材への変更
- 畳からフローリングへの変更
- 通路面の材料変更
材料別特徴
| 床材の種類 | メリット | デメリット | 費用相場（6畳） |
|---|---|---|---|
| クッションフロア | 滑りにくい、清拭しやすい | 見た目が安っぽい | 4〜8万円 |
| フローリング | 車椅子移動が楽 | 滑りやすい場合がある | 8〜15万円 |
| タイルカーペット | 部分交換可能 | 汚れが目立つ | 3〜6万円 |
4. 引き戸等への扉の取替え
対象工事
- 開き戸から引き戸への変更
- 開き戸から折れ戸への変更
- 扉の撤去
- ドアノブの変更、戸車の設置等
扉別比較
| 扉の種類 | 適用場面 | メリット | 費用相場 |
|---|---|---|---|
| 引き戸 | 車椅子利用者 | 開閉が楽、省スペース | 8〜15万円 |
| 折れ戸 | 狭い脱衣所等 | 開閉スペースが少ない | 6〜12万円 |
| アコーディオンカーテン | 完全仕切りが不要 | 安価、工事が簡単 | 2〜5万円 |
5. 便器の取替え
対象となる便器
- 和式便器から洋式便器への取替え
- 既存の洋式便器の取替えは原則対象外（高さが極端に低い等特別な理由がある場合のみ）
付帯工事
- 給排水設備工事
- 床材の変更
- 壁材の変更
- 手すりの設置
費用相場：15〜35万円（付帯工事込み）
6. その他各工事に付帯して必要となる工事
具体例
- 手すり取付けのための壁の下地補強
- 浴室の段差解消に伴う給排水設備工事
- 床材変更に伴う巾木の取替え
- 扉取替えに伴う壁の一部撤去
申請から工事完了までの完全手順
ステップ1：事前準備と相談
1-1. ケアマネジャーへの相談
- 住宅改修の必要性について相談
- 改修箇所と内容の検討
- 理由書作成の依頼
1-2. 施工業者の選定
- 複数業者からの見積もり取得
- 介護保険制度に精通した業者の選択
【専門家の視点】 ケアマネジャーが住宅改修に詳しくない場合があります。その際は、自治体の介護保険課や地域包括支援センターに相談することをお勧めします。また、作業療法士等の専門職に現地確認してもらうと、より適切な改修プランが立てられます。
ステップ2：事前申請書類の準備と提出
必要書類一覧
| 書類名 | 作成者 | 入手先 |
|---|---|---|
| 住宅改修費支給申請書 | 本人・家族 | 市区町村窓口 |
| 住宅改修が必要な理由書 | ケアマネジャー等 | ケアマネジャー |
| 工事費見積書 | 施工業者 | 施工業者 |
| 住宅改修予定箇所の写真 | 施工業者 | 施工業者 |
| 住宅の平面図 | 施工業者 | 施工業者 |
提出期限 工事着工前に必ず提出すること。着工後の申請は受理されません。
ステップ3：自治体による審査
審査期間：通常1〜2週間
審査内容
- 改修内容が介護保険の対象工事に該当するか
- 利用者の身体状況に適した改修内容か
- 見積もり金額が適正か
承認通知の受領 審査が通ると「住宅改修承認通知書」が交付されます。
ステップ4：工事の実施
工事開始前の注意点
- 承認通知書受領後に着工
- 工事工程表の確認
- 近隣への挨拶（必要に応じて）
工事中のチェックポイント
- 承認された内容通りの工事が行われているか
- 追加工事の提案があった場合の対応
- 工事写真の撮影状況
ステップ5：工事完了後の手続き
完了報告書類
| 書類名 | 作成者 | 内容 |
|---|---|---|
| 住宅改修に要した費用に係る領収書 | 施工業者 | 工事代金の領収書 |
| 工事費内訳書 | 施工業者 | 詳細な工事内容と費用 |
| 住宅改修完了後の写真 | 施工業者 | 改修箇所の完成写真 |
| 住宅改修完了確認書 | 本人・家族 | 工事完了の確認 |
支給までの期間：書類提出から約1〜2ヶ月
業者選びで失敗しないための重要ポイント
信頼できる業者の見分け方
必須確認事項
| 確認項目 | 重要度 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 建設業許可 | 必須 | 許可証の確認 |
| 介護保険制度の理解度 | 必須 | 質問による確認 |
| 施工実績 | 重要 | 過去の施工例確認 |
| アフターフォロー体制 | 重要 | 保証内容の確認 |
| 地域密着度 | 推奨 | 所在地・営業年数 |
悪徳業者の見分け方と注意点
危険な業者の特徴
【専門家の視点】 以下のような業者は避けるべきです：
- 突然の訪問営業 「介護保険で無料で工事できます」と突然訪問してくる業者
- 極端な値引き 「今日契約すれば半額」などの不自然な値引き提案
- 工事内容の説明不足 見積書が「一式」表記ばかりで詳細が不明
- 契約を急かす 「承認が下りる前に工事を始めましょう」と違法な提案
- 追加工事の多発 工事中に次々と追加工事を提案してくる
優良業者の選び方
3社以上の相見積もりを取る
比較すべきポイント：
- 総工事費だけでなく、内訳の詳細
- 使用する材料のグレード
- 工事期間と工程
- 保証内容とアフターサービス
- 担当者の対応品質
地域の実績を確認
- 自治体の介護保険課で推奨業者リストを確認
- 地域包括支援センターでの評判
- 近隣での施工実績
費用相場と自己負担を抑える方法
工事別費用相場一覧
単体工事の場合
| 工事内容 | 工事費相場 | 1割負担時の自己負担額 |
|---|---|---|
| トイレ手すり設置 | 2〜4万円 | 2,000〜4,000円 |
| 浴室手すり設置 | 4〜7万円 | 4,000〜7,000円 |
| 玄関段差解消 | 8〜15万円 | 8,000〜15,000円 |
| 和式→洋式便器交換 | 20〜30万円 | 20万円まで支給対象 |
| 室内扉交換 | 8〜15万円 | 8,000〜15,000円 |
複合工事の場合（20万円フル活用）
パターン1：浴室改修重点プラン
- 浴室手すり設置：5万円
- 浴室入口段差解消：8万円
- 浴室扉交換：7万円
- 合計：20万円（自己負担1割時：2万円）
パターン2：全体バリアフリープラン
- トイレ手すり：3万円
- 廊下手すり：6万円
- 玄関段差解消：8万円
- 室内扉交換：3万円
- 合計：20万円（自己負担1割時：2万円）
自己負担を抑える裏技
1. 複数回の分割工事は損 20万円の限度額は生涯で1回のため、計画的に一括で工事することで、業者の諸経費や出張費を抑えられます。
2. 自治体独自の助成制度との併用 一部の自治体では、介護保険とは別に住宅改修助成制度を設けています。
3. 住宅ローン控除の活用 バリアフリー改修工事は住宅ローン控除の対象となる場合があります。
【専門家の視点】 20万円を超える工事を検討している場合、介護保険対象分と対象外分を明確に分けて見積もりを取ることが重要です。また、工事の優先順位を付けて、最も必要な改修から実施することをお勧めします。
よくある失敗事例とトラブル回避術
失敗事例1：事前申請を忘れて工事実施
失敗内容 急いで手すりを設置したが、事前申請をしていなかったため介護保険が適用されず、全額自己負担となった。
回避策
- 緊急性がある場合でも、必ず事前申請を行う
- ケアマネジャーと連携して迅速な申請手続きを行う
- 応急処置と本格改修を分けて考える
失敗事例2：不適切な改修により使いにくくなった
失敗内容 手すりの高さや位置が利用者の身体に合わず、かえって使いにくくなった。
回避策
- 作業療法士等の専門職による現地確認
- 利用者の身体機能に合わせた詳細な打ち合わせ
- 可能であれば仮設置による確認
失敗事例3：追加工事で予算オーバー
失敗内容 工事開始後、「下地が腐っている」として大幅な追加工事を提案され、当初の予算を大幅に超えた。
回避策
- 事前の詳細調査を依頼する
- 追加工事が発生する可能性と条件を事前に確認
- 追加工事については改めて見積もりを取る
失敗事例4：工事後すぐに不具合発生
失敗内容 手すり取付け後1ヶ月で手すりがグラつき始めたが、業者と連絡が取れなくなった。
回避策
- 地域密着型の業者を選ぶ
- 工事保証の内容を書面で確認
- アフターフォロー体制を事前に確認
失敗事例5：近隣とのトラブル
失敗内容 工事の騒音や作業員の駐車により近隣住民との関係が悪化した。
回避策
- 工事前の近隣挨拶（業者と一緒に行う）
- 工事時間の配慮（早朝・夜間は避ける）
- 作業員の駐車場確保
契約前チェックリスト
業者選定時の必須確認事項
□ 建設業許可証の確認
- 許可番号と有効期限
- 許可業種の確認
□ 介護保険制度の理解度
- 申請手続きの流れを説明できるか
- 対象工事・対象外工事を理解しているか
□ 見積書の詳細度
- 工事内容が具体的に記載されているか
- 材料費・工賃・諸経費が分かれているか
- 「一式」表記が多すぎないか
□ 施工実績の確認
- 同様の工事実績があるか
- 地域での評判はどうか
□ 保証・アフターフォロー
- 工事保証の期間と内容
- 不具合時の対応体制
契約時の必須確認事項
□ 契約書の内容
- 工事内容と仕様の詳細
- 工事期間と完成予定日
- 支払い条件（着手金・中間金・完成金の割合）
□ 変更契約の条件
- 追加工事が発生する場合の手続き
- 金額変更の承認方法
□ トラブル時の対応
- 工事遅延時の対応
- 近隣トラブル時の責任分担
- 完成後の不具合対応
工事種類別の選び方ガイド
あなたの状況別おすすめ改修プラン
転倒リスクが高い方（歩行不安定） 優先順位1位：手すりの設置
- 廊下の縦型手すり
- トイレのL字型手すり
- 浴室の縦型・横型手すり
車椅子を使用される方 優先順位1位：段差解消とドア交換
- 室内段差の解消
- 開き戸から引き戸への変更
- 車椅子対応トイレへの改修
認知症の症状がある方 優先順位1位：安全性重視の改修
- 滑りにくい床材への変更
- 明確な色分けによる段差の可視化
- シンプルな開閉方式のドア
介護する家族の負担軽減重視 優先順位1位：介護しやすい環境作り
- 車椅子対応の浴室改修
- 介護用ベッド設置スペースの確保
- 洋式便器への交換
住宅タイプ別注意点
一戸建て住宅の場合
- 構造（木造・鉄骨造等）による工事制約の確認
- 床下・天井裏のスペース確認
- 外構工事（スロープ等）の近隣配慮
マンション・アパートの場合
- 管理組合・大家の許可取得
- 共用部分への工事制限
- 騒音対策の徹底
賃貸住宅の場合
- 原状回復義務の確認
- 大家との改修費用負担協議
- 退去時の取り扱い
よくある質問（Q&A）
Q1: 介護保険の住宅改修は何回まで利用できますか？
A1: 原則として生涯で1回、20万円までです。ただし、以下の場合は再度利用可能です：
- 転居した場合
- 要介護度が3段階以上上がった場合（要支援2→要介護3等）
Q2: 工事代金はいつ支払うのですか？
A2: 償還払いが原則で、以下の流れとなります：
- 利用者が業者に工事代金全額を支払い
- 自治体に完了報告書類を提出
- 1〜2ヶ月後に自己負担分以外が指定口座に振り込まれる
一部の自治体では受領委任払いも可能で、この場合は自己負担分のみの支払いで済みます。
Q3: 工事中は家にいなければなりませんか？
A3: 必ずしも在宅する必要はありませんが、以下の点にご注意ください：
- 工事開始時と完了時は立ち会いが望ましい
- 緊急連絡先を工事業者に伝えておく
- 貴重品の管理に注意する
- 近隣への配慮として、工事の説明ができる方が在宅していると安心
Q4: ケアマネジャーがいない場合はどうすればよいですか？
A4: 以下の機関で「理由書」の作成を依頼できます：
- 地域包括支援センターの職員
- 福祉用具専門相談員
- 作業療法士、理学療法士
- 一級建築士、二級建築士
費用は通常数千円程度です。
Q5: 同居家族がいる場合、誰の名義で申請すればよいですか？
A5: 要介護・要支援認定を受けた本人名義での申請となります。本人の意思表示が困難な場合は、家族が代理で手続きを行うことができます。
Q6: マンションでも住宅改修はできますか？
A6: 専有部分の改修は可能ですが、以下にご注意ください：
- 管理組合への事前相談・承認が必要な場合がある
- 共用部分（廊下、エントランス等）の改修は原則不可
- 水回りの工事では下階への影響を十分配慮する
- 騒音対策を徹底する
Q7: 介護保険の住宅改修以外に利用できる制度はありますか？
A7: 以下の制度との併用が可能な場合があります：
- 自治体独自の住宅改修助成制度
- 障害者手帳をお持ちの方向けの日常生活用具給付
- 住宅ローン控除（バリアフリー改修工事）
- 各種補助金制度
詳細は自治体の介護保険課や福祉課にお問い合わせください。
Q8: 職人さんにお茶出しは必要ですか？
A8: 絶対に必要ではありませんが、以下の点を考慮してください：
- 夏場の水分補給として冷たいお茶等を提供すると喜ばれる
- 毎回である必要はなく、工事初日や完了日に気持ち程度で十分
- 工事現場では衛生管理のため、ペットボトル等密閉容器が望ましい
- 無理をせず、「お疲れさまです」の声かけだけでも十分
Q9: 工事後に不具合が見つかった場合の対応は？
A9: 以下の手順で対応してください：
- 即座に業者に連絡（写真撮影も併せて実施）
- 保証書の確認（工事保証の範囲と期限）
- 自治体への相談（必要に応じて）
- 消費生活センターへの相談（業者との話し合いが難航する場合）
優良業者であれば、保証期間内の不具合は無償で修理してくれます。
Q10: 火災保険は住宅改修に使えますか？
A10: 住宅改修工事自体は火災保険の対象外ですが、以下のケースでは活用できる可能性があります：
- 自然災害による住宅損傷の修復工事の一環として改修する場合
- 給排水設備の事故による水漏れ修理と併せて改修する場合
ただし、保険適用の判断は保険会社が行うため、事前に保険会社への相談が必要です。
まとめ：安心・安全な住宅改修を実現するために
介護保険住宅改修制度は、要介護・要支援の方とご家族にとって非常に有効な制度です。最大20万円の支給を受けて、自己負担1〜3割で住環境を改善できる貴重な機会を、ぜひ有効活用してください。
成功のカギとなる5つのポイント
- 事前申請の徹底：工事着工前の申請は絶対に忘れずに
- 複数業者の比較検討：3社以上の見積もりで適正価格を把握
- 専門職との連携：ケアマネジャーや作業療法士のアドバイスを活用
- 計画的な改修：20万円の限度額を有効活用する全体プランの策定
- 信頼できる業者選び：地域密着で介護保険制度に精通した業者の選択
住宅改修により、転倒リスクの軽減、日常生活動作の改善、介護者負担の軽減など、多くのメリットを得ることができます。ご本人とご家族が安心して暮らせる住環境づくりのために、この制度を積極的に活用していただければと思います。
何かご不明な点がありましたら、まずはケアマネジャーや地域包括支援センター、自治体の介護保険課にご相談ください。皆様の安全で快適な住生活の実現を心から願っております。
