はじめに:外壁塗装で後悔しないために
築15年を迎えたご自宅の外壁を見上げて、「そろそろ塗り替えの時期かな…」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。私自身、一級建築士として数多くの現場を経験し、5年前に自宅の外壁塗装を検討した際、シリコン塗料とフッ素塗料の価格差に驚き、どちらを選ぶべきか悩んだ経験があります。
当時の私は、「フッ素塗料は高いけれど、長持ちするなら結果的にお得なのでは?」と考えていました。しかし、複数の業者から見積もりを取り、実際の耐用年数や住環境を考慮した結果、シリコン塗料を選択しました。今振り返ると、その判断は正しかったと感じています。
外壁塗装は、一度行うと次回まで10年以上の期間が空くものです。だからこそ、費用だけでなく、ご家族の生活スタイルや将来設計も含めて、慎重に選択していただきたいのです。
この記事では、シリコン塗料とフッ素塗料の費用面での違いを中心に、どちらがあなたのお住まいに適しているかを判断するための材料を、すべてお伝えいたします。
1. 外壁塗装の基本知識:なぜ塗り替えが必要なのか
外壁塗装の役割と重要性
外壁塗装は、単に建物を美しく見せるためだけのものではありません。雨水や紫外線、風雨から大切なお住まいを守る「建物の防護服」としての重要な役割を担っています。
私がリフォーム現場で目にしてきた中で、最も印象的だったのは、築20年のお宅で外壁塗装を一度も行わずにいたケースでした。外壁のひび割れから雨水が侵入し、内部の構造材が腐食。結果的に、外壁塗装費用の3倍以上の修繕費用がかかってしまいました。
「まだ大丈夫そうだから…」とお考えの方も多いのですが、外壁の劣化は思っている以上に進行が早いものです。特に、以下のような症状が見られる場合は、早めの対応をおすすめします。
外壁塗装が必要なサイン
- チョーキング現象:手で外壁を触ると白い粉が付く
- ひび割れ(クラック):髪の毛程度の細い線から、明らかな亀裂まで
- 塗膜の剥がれ:塗料がポロポロと剥がれ落ちる
- 色褪せ:新築時と比べて明らかに色が薄くなっている
- コケやカビの発生:湿気の多い北面などに緑色の汚れが付着
塗料選びが家族の暮らしに与える影響
外壁塗装の塗料選びは、単なる費用の問題ではありません。選択する塗料によって、今後10~20年間のメンテナンス頻度や、住まいの快適性が大きく変わります。
たとえば、お子様が小さいご家庭では、外壁塗装工事中の騒音や臭いが生活に与える影響を最小限に抑えたいとお考えでしょう。また、ご高齢のご夫婦がお住まいの場合、次回の塗り替え時期まで健康に過ごせるかという不安もあるかもしれません。
私自身の経験でも、5年前の外壁塗装時には、当時小学生だった娘の受験時期と重ならないよう、工事時期を慎重に検討しました。塗料選びも、単純に耐用年数だけでなく、家族のライフプランを考慮することが重要だと実感しています。
2. シリコン塗料の特徴と費用相場
シリコン塗料とは?基本的な特徴を理解する
シリコン塗料は、現在の外壁塗装市場において最も多く使用されている塗料です。正式には「シリコン樹脂塗料」と呼ばれ、主成分であるシリコン樹脂が優れた耐候性と防水性を発揮します。
私がリフォーム現場で見てきた限り、シリコン塗料は「バランス型」の塗料と言えるでしょう。価格、性能、施工性、すべてにおいて平均点以上の実力を持ち、多くのご家庭のニーズに応えることができます。
シリコン塗料の主な特徴
1. コストパフォーマンスの高さ シリコン塗料の最大の魅力は、価格と性能の絶妙なバランスです。私が担当した現場では、予算を抑えながらも、しっかりとした品質を求めるご家庭の約7割がシリコン塗料を選択されています。
2. 適度な耐久性 一般的に10~15年の耐用年数を持ち、多くのご家庭のライフサイクルに適しています。お子様が成長し、進学や就職を迎える頃に次回の塗り替え時期が来るため、家計の見通しも立てやすいというメリットがあります。
3. 色選択の豊富さ シリコン塗料は各メーカーから豊富な色バリエーションが展開されており、外観にこだわりたいご家庭にも対応できます。私の自宅でも、家族会議を重ねて選んだグレー系の色が、5年経った今でも美しく保たれています。
4. メンテナンス性の良さ 汚れが付きにくく、定期的な清掃で美観を保ちやすい特徴があります。特に、交通量の多い道路沿いにお住まいの場合、この特徴は非常に重要です。
シリコン塗料の費用相場:30坪住宅での実例
シリコン塗料による外壁塗装の費用相場について、私が過去に携わった案件の実例をもとに、詳しくご説明いたします。
30坪(約120㎡)2階建て住宅の場合
基本工事費用の内訳
- 足場設置・撤去費用: 120,000円~150,000円
- 高圧洗浄: 30,000円~40,000円
- 下地処理(ひび割れ補修、パテ処理): 50,000円~100,000円
- 養生費用: 30,000円~50,000円
- シリコン塗料代(3回塗り): 250,000円~350,000円
- 人件費: 200,000円~300,000円
- 諸経費: 50,000円~80,000円
合計費用: 730,000円~1,070,000円
ただし、これらの費用はあくまで目安であり、実際の費用は以下の要因によって大きく変動します。
費用に影響する主な要因
1. 外壁の劣化状況 私が現場で経験した中で、最も費用差が生まれるのがこの部分です。軽微なチョーキング程度であれば基本的な下地処理で済みますが、構造的なひび割れがある場合は、シーリング工事や部分的な外壁材の交換が必要になることもあります。
実際に担当したケースでは、当初80万円の見積もりだった工事が、詳細な調査の結果、外壁材の一部交換が必要となり、最終的に120万円になったこともありました。
2. 使用するシリコン塗料のグレード シリコン塗料と一口に言っても、各メーカーから様々なグレードの製品が販売されています。
- スタンダードグレード: 平米単価2,000円~2,500円
- プレミアムグレード: 平米単価2,500円~3,200円
- 超低汚染型: 平米単価3,000円~3,800円
私自身の経験では、海の近くにお住まいのお客様には塩害に強いプレミアムグレードを、交通量の多い道路沿いのお客様には超低汚染型をおすすめすることが多いです。
3. 付帯部分の塗装範囲 外壁塗装と併せて、以下の部分も塗装することが一般的です。
- 雨樋: 50,000円~80,000円
- 破風板・軒天: 80,000円~120,000円
- 玄関庇・バルコニー: 30,000円~60,000円
- シャッターボックス: 20,000円~40,000円
これらを全て含めると、30坪住宅でも総額100万円を超えることは珍しくありません。
シリコン塗料のメリット・デメリット
メリット
1. 予算への負担が比較的軽い 外壁塗装は決して安い買い物ではありませんが、シリコン塗料であれば多くのご家庭で無理のない範囲で実施できます。私がお手伝いしたご家庭の中には、「フッ素塗料は予算オーバーだけれど、シリコンなら何とか」という声を多数いただいています。
2. 施工業者の選択肢が豊富 シリコン塗料は最も一般的な塗料のため、多くの塗装業者が取り扱っています。これにより、相見積もりを取りやすく、適正価格での施工が期待できます。
3. 不具合時の対応が迅速 万が一、塗装に不具合が生じた場合も、シリコン塗料であれば補修用の材料を入手しやすく、迅速な対応が可能です。
デメリット
1. フッ素塗料と比較した耐用年数の短さ シリコン塗料の耐用年数は10~15年程度のため、フッ素塗料(15~20年)と比較すると、塗り替え頻度が高くなります。
2. 長期的な総コストの検討が必要 私自身も悩んだポイントですが、30年間でのトータルコストを考えた場合、シリコン塗料を2回行うか、フッ素塗料を1.5回行うかという比較検討が必要になります。
3. 高機能性への期待は禁物 遮熱性や超低汚染性など、特殊な機能を期待する場合は、シリコン塗料では限界があります。
3. フッ素塗料の特徴と費用相場
フッ素塗料とは?プレミアム塗料の実力
フッ素塗料は、外壁塗装材の中でも最高グレードに位置づけられる塗料です。フッ素樹脂を主成分とし、優れた耐候性と耐久性を誇ります。私が現場で見てきた限り、「一度塗ったら、当分心配したくない」というお客様に最適な選択肢と言えるでしょう。
興味深いことに、フッ素塗料は元々、過酷な環境に晒される橋梁や高層ビルなどの建築物に使用されていました。それが住宅用に改良され、現在では一般住宅でも使用できるようになったのです。
フッ素塗料の主な特徴
1. 圧倒的な耐久性 フッ素塗料の最大の特徴は、その耐久性の高さです。一般的に15~20年の耐用年数を持ち、中には25年保証を謳う製品もあります。私が5年前に調査したフッ素塗料施工物件では、築18年経過してもほとんど劣化が見られませんでした。
2. 優れた耐候性 紫外線、酸性雨、塩害など、外壁を劣化させる様々な要因に対して高い抵抗力を持ちます。特に、海に近い立地や工業地帯にお住まいの場合、この特性は非常に重要です。
3. 汚れにくさ(セルフクリーニング効果) フッ素塗料の表面は非常に滑らかで、汚れが付着しにくい特徴があります。さらに、雨水によって汚れが自然に洗い流される「セルフクリーニング効果」も期待できます。
4. 色褪せしにくさ 一般的な塗料と比較して、色の変化が極めて少ないのもフッ素塗料の特徴です。新築時の美しい外観を長期間維持できます。
フッ素塗料の費用相場:投資価値を見極める
フッ素塗料による外壁塗装の費用は、シリコン塗料と比較して相当高額になります。しかし、長期的な視点で考えると、決して「高い」だけの選択肢ではありません。
30坪(約120㎡)2階建て住宅の場合
基本工事費用の内訳
- 足場設置・撤去費用: 120,000円~150,000円
- 高圧洗浄: 30,000円~40,000円
- 下地処理: 50,000円~100,000円
- 養生費用: 30,000円~50,000円
- フッ素塗料代(3回塗り): 400,000円~550,000円
- 人件費: 250,000円~350,000円
- 諸経費: 70,000円~100,000円
合計費用: 950,000円~1,340,000円
シリコン塗料と比較すると、20~30万円程度の差額が生じます。この差額について、私は常にお客様に「今後20年間のメンテナンス計画」として説明しています。
フッ素塗料の価格帯別特徴
1. エントリーモデル(平米単価3,200円~3,800円) 基本的なフッ素塗料で、シリコン塗料からのステップアップには最適です。私が担当したケースでは、「予算は少し厳しいけれど、長持ちする塗料にしたい」というお客様に選ばれることが多いです。
2. スタンダードモデル(平米単価3,800円~4,500円) 最も一般的なフッ素塗料で、メーカー各社の主力商品です。私の自宅でも、当初はこのグレードを検討していました。
3. プレミアムモデル(平米単価4,500円~5,500円) 遮熱性や超低汚染性など、付加機能を持つ高機能フッ素塗料です。初期費用は高いですが、エアコン代の節約効果も期待できます。
4. 超高性能モデル(平米単価5,500円~7,000円) 最高級のフッ素塗料で、25年保証を謳う製品もあります。ただし、一般住宅での使用はコストメリットを慎重に検討する必要があります。
フッ素塗料の真のメリット・デメリット
メリット
1. 長期的な安心感 フッ素塗料を選択する最大のメリットは、「当分、外壁のことを心配しなくて良い」という精神的な安心感です。私が担当したお客様の中には、「子どもが成人するまで、外壁塗装の心配をしたくない」という理由で選択された方もいらっしゃいます。
2. トータルコストの軽減可能性 20~30年という長期スパンで考えた場合、フッ素塗料のほうが経済的になる可能性があります。ただし、これには条件があります。
3. 美観の長期維持 新築時の美しさを長期間保てるため、住まいへの愛着や満足度も高く維持できます。
4. メンテナンス頻度の削減 外壁の点検や部分補修の頻度も、シリコン塗料と比較して少なくて済みます。
デメリット
1. 初期費用の高さ 最も大きなデメリットは、やはり初期費用の高さです。多くのご家庭にとって、20~30万円の差額は決して小さくありません。
2. 施工業者の技術レベル要求 フッ素塗料は、シリコン塗料と比較して施工が難しく、業者の技術レベルが仕上がりに大きく影響します。私が見てきた中でも、技術力の低い業者による施工で、フッ素塗料の性能を十分に発揮できなかった例もありました。
3. 補修時のコスト高 万が一、部分的な補修が必要になった場合、フッ素塗料は材料費が高いため、補修コストもそれなりに高額になります。
4. オーバースペックの可能性 住宅の立地条件や住まい方によっては、フッ素塗料の高い性能が無駄になってしまう可能性もあります。
4. 【徹底比較】シリコンvsフッ素:費用対効果を数字で検証
20年間のトータルコスト比較
外壁塗装の塗料選びで最も重要なのは、初期費用だけでなく、長期的な視点でのトータルコストです。私自身も5年前の塗料選択時に、電卓を片手に何度も計算し直した記憶があります。
【ケース1】30坪住宅・標準的な劣化状況の場合
シリコン塗料を選択した場合(20年間)
- 1回目(築15年時): 850,000円
- 2回目(築27年時): 900,000円(物価上昇を考慮)
- 20年間合計: 1,750,000円
フッ素塗料を選択した場合(20年間)
- 1回目(築15年時): 1,150,000円
- 20年間合計: 1,150,000円
差額: 600,000円(フッ素塗料の方が経済的)
この計算だけを見ると、「フッ素塗料の方が絶対にお得!」と思われるかもしれません。しかし、実際にはもう少し複雑な要素を考慮する必要があります。
【ケース2】劣化の激しい環境(海岸地域・工業地帯)の場合
シリコン塗料を選択した場合(20年間)
- 1回目(築12年時): 900,000円(下地処理費増)
- 2回目(築24年時): 950,000円
- 20年間合計: 1,850,000円
フッ素塗料を選択した場合(20年間)
- 1回目(築12年時): 1,200,000円
- 20年間合計: 1,200,000円
差額: 650,000円(フッ素塗料の方が経済的)
劣化しやすい環境では、フッ素塗料の経済的メリットがより顕著に現れます。
【ケース3】好条件環境(住宅地・南面道路)の場合
シリコン塗料を選択した場合(20年間)
- 1回目(築15年時): 800,000円
- 2回目(築30年時): 850,000円
- 20年間合計: 1,650,000円
フッ素塗料を選択した場合(20年間)
- 1回目(築15年時): 1,100,000円
- 20年間合計: 1,100,000円
差額: 550,000円(フッ素塗料の方が経済的)
隠れたコストも含めた本当の比較
私が現場で経験してきた中で、塗料選択時に見落とされがちな「隠れたコスト」があります。これらを含めて、より実践的な比較をしてみましょう。
シリコン塗料の隠れたコスト
1. 中間メンテナンス費用 シリコン塗料の場合、全面塗替えの間に部分的な補修が必要になることがあります。
- 部分タッチアップ: 50,000円~100,000円(築20年頃)
- シーリング補修: 80,000円~150,000円(築22年頃)
2. 美観維持のための清掃費用 汚れが目立ちやすくなる築12年頃から、定期的な外壁清掃が必要になる場合があります。
- 年間清掃費用: 20,000円~40,000円
3. 精神的コスト 数値化は困難ですが、「そろそろ塗り替えが必要かも…」という不安を抱える期間が長くなります。
フッ素塗料の隠れたコスト
1. 初期費用の資金調達コスト フッ素塗料の場合、リフォームローンを利用するケースが多く、金利負担も考慮する必要があります。
- 差額30万円を5年ローンで借りた場合の金利負担: 約30,000円~50,000円
2. オーバースペックによる機会損失 高い初期費用を払ったものの、実際の住環境ではその性能を活かしきれない場合があります。
【実証】我が家での5年間の検証結果
私自身が5年前にシリコン塗料を選択した理由と、その後の経過について、率直にお話しいたします。
選択理由
- 予算の制約: 当時、子どもの教育費が重なり、外壁塗装に充てられる予算は80万円が限界でした
- 将来の住み替え可能性: 10年後に住み替える可能性があり、長期耐久性にそれほど価値を感じませんでした
- リスク分散: 初回の外壁塗装ということもあり、業者選びも含めてリスクを最小限に抑えたかった
5年後の現状
- 美観: まだ新築時に近い美しさを保っています
- 劣化状況: 軽微なチョーキングが北面に見られる程度
- 満足度: 選択に後悔はありません
今後の計画 築20年時点(5年後)で再度検討し、その時の家族状況や住み替え予定に応じて、シリコンかフッ素かを判断する予定です。
5. 塗料選択の決め手:あなたに最適な判断基準
ライフステージ別の最適な選択
外壁塗装の塗料選択は、ご家族のライフステージによって最適解が変わります。私がこれまでお手伝いしてきた数多くのご家庭の実例をもとに、具体的な選択指針をお示しいたします。
【30代子育て世代】教育費とのバランスを重視
推奨: シリコン塗料
この世代の最大の関心事は、お子様の教育費確保です。私が担当したご家庭でも、「中学受験を考えているので、外壁塗装の予算は抑えたい」「大学進学までに住宅ローンを減らしたい」といった声を多数いただいています。
判断のポイント
- 初期費用を抑え、教育費や住宅ローン返済を優先
- 10~15年後の塗り替え時期には、お子様が独立し、家計に余裕が生まれている可能性
- 住み替えの可能性もあるため、過度な長期投資は避ける
実例: 横浜市にお住まいのAさん(35歳・会社員)は、小学生の双子を持つお父様でした。「フッ素塗料にも興味はあるが、子どもの習い事や塾費用を考えると、シリコン塗料が現実的」とのご判断で、結果として80万円で工事を完了。「10年後に改めて検討します」とおっしゃっていました。
【40代・50代働き盛り世代】長期的な資産価値を重視
推奨: フッ素塗料(条件により)
この世代は収入が安定し、住宅への長期投資が現実的に検討できる時期です。ただし、すべてのケースでフッ素塗料が最適とは限りません。
フッ素塗料を選ぶべき条件
- 現在の住まいに20年以上住み続ける予定がある
- 年収が800万円以上あり、初期費用の負担が家計を圧迫しない
- 住宅の立地条件が厳しい(海に近い、交通量が多いなど)
- 外壁の美観に強いこだわりがある
シリコン塗料が適している条件
- 住み替えの可能性がある
- 他のリフォーム(屋根、水回りなど)も予定している
- 投資よりも手堅い選択を好む性格
実例: 千葉市にお住まいのBさん(48歳・自営業)は、海から2kmの立地にお住まいでした。「塩害で屋根の劣化も早く、外壁も長持ちする塗料でないと割に合わない」との判断で、110万円でフッ素塗料による工事を実施。3年経過した現在も、非常に美しい状態を保っています。
【60代以上シニア世代】メンテナンス負担の軽減を重視
推奨: フッ素塗料
この世代の最大の関心事は、「メンテナンスの手間と負担を減らしたい」ということです。私が担当したシニア世代のお客様からは、「次の塗り替えの時に、自分が元気でいるかわからない」「子どもに迷惑をかけたくない」といった声をよく聞きます。
判断のポイント
- 初期費用よりも、長期的な安心感を重視
- 年金生活に入る前に、大きな支出を済ませておきたい
- 子どもや孫の世代まで、美しい家を残したい
実例: 埼玉県にお住まいのCさんご夫妻(65歳・63歳)は、「これが最後の外壁塗装になるかもしれない」との思いで、フッ素塗料を選択されました。「息子夫婦が将来住むかもしれないし、きれいな状態で残してあげたい」とのお気持ちが決め手でした。
住環境別の最適な選択
塗料選択において、住環境は費用対効果に大きく影響する要素です。
【海岸地域・工業地帯】厳しい環境での選択
推奨: フッ素塗料(ほぼ必須)
海からの塩害、工場からの化学物質、これらは外壁塗装にとって最も過酷な環境条件です。私が担当した海岸地域の物件では、シリコン塗料でも8~10年で明らかな劣化が見られました。
実際の劣化状況(海から500m以内)
- シリコン塗料: 8年でチョーキング開始、12年で塗膜剥離
- フッ素塗料: 15年経過してもほぼ劣化なし
【住宅地・良好な環境】標準的な条件での選択
推奨: シリコン塗料またはフッ素塗料(予算と価値観で判断)
一般的な住宅地であれば、どちらの塗料でも期待通りの性能を発揮します。選択の決め手は、予算とライフプランです。
【山間部・寒冷地】特殊環境での選択
推奨: フッ素塗料(凍害対策を含む)
山間部や寒冷地では、凍結融解による劣化が大きな問題となります。フッ素塗料の高い柔軟性と耐久性は、これらの環境で真価を発揮します。
価値観別の選択指針
【経済性重視派】数字で判断したい方
このタイプの方は、トータルコストでの比較を重視されます。私の経験では、エンジニアや会計士の方に多いタイプです。
選択の指針
- 20年間のトータルコストを詳細に計算
- 金利や物価上昇率も考慮に入れる
- 住み替え予定があれば、シリコン塗料が有利
【安心感重視派】長期的な安心を求める方
「お金には代えられない安心感がある」と考えるタイプの方です。医師や教師など、安定志向の職業の方に多く見られます。
選択の指針
- 初期費用が高くても、フッ素塗料による長期安心感を選択
- メンテナンス頻度の少なさを重視
- 家族への負担軽減を考慮
【美観重視派】住まいの美しさにこだわる方
外観の美しさを長期間保ちたいと考えるタイプの方です。建築関係者や美容関係者に多いタイプです。
選択の指針
- フッ素塗料の色褪せしにくさを重視
- セルフクリーニング効果による美観維持
- 高品質な仕上がりを求める
6. 見積もり取得時の注意点:悪徳業者を見抜く方法
見積書で確認すべき重要ポイント
外壁塗装の見積書は、業者の姿勢や工事品質を判断する重要な材料です。私自身も5年前の業者選定時に、複数の見積書を詳細に比較検討しました。その経験と、これまで数多くの見積書を見てきた専門家としての視点から、チェックポイントをお教えします。
【基本情報の記載確認】
1. 工事内容の詳細記載 優良業者の見積書には、以下の内容が明確に記載されています。
- 使用塗料名: 「シリコン塗料」ではなく、「日本ペイント ファイン4Fセラミック」など具体的な商品名
- 塗布回数: 下塗り1回、中塗り1回、上塗り1回の3回塗りが基本
- 施工面積: 外壁面積○○㎡、付帯部分○○㎡など、測定根拠が明確
- 下地処理内容: ひび割れ補修、シーリング打ち替えの範囲と方法
注意すべき見積書の特徴
- 「塗装工事一式 ○○万円」のような大雑把な記載
- 塗料名が記載されていない、または「当社オリジナル塗料」
- 施工面積の根拠が不明
- 極端に安い、または高すぎる価格設定
2. 保証内容の明記 私が現場で見てきた中で、トラブルの多くは保証に関する認識の違いから生じています。
確認すべき保証項目
- 保証期間: シリコン塗料なら10年、フッ素塗料なら15年が一般的
- 保証範囲: 塗膜の剥離、色褪せ、チョーキングなど、何が対象か
- 保証条件: 定期点検の必要性、免責事項など
- 保証書の発行: 口約束ではなく、書面での保証確約
実例: 私が以前調査したケースでは、「10年保証」と謳いながら、実際の保証書では「自然災害による損傷は除く」「定期点検を怠った場合は保証対象外」など、多くの免責条項がありました。契約前の確認が重要です。
危険な営業手法の見分け方
【即決を迫る業者は要注意】
外壁塗装は高額な工事のため、慎重な検討が必要です。にもかかわらず、即決を迫る業者は避けるべきです。
危険な営業トーク例
- 「今日契約していただければ、50万円値引きします」
- 「近所で工事をするので、足場代をサービスします」
- 「材料が余っているので、特別に安くできます」
- 「今だけの特別価格です」
私の体験談: 5年前の我が家の外壁塗装検討時、ある業者から「今日中に契約していただければ100万円の工事を70万円にします」という提案がありました。一見魅力的でしたが、翌日に詳細を確認したところ、使用予定の塗料が低品質なものであることが判明しました。
【適正な検討期間を提案する業者を選ぶ】
優良業者は、お客様の検討時間を尊重します。
良心的な業者の対応例
- 「他社との比較もしてください」
- 「ご家族でよく相談してからお返事ください」
- 「疑問点があれば、いつでもお聞きください」
- 「見積もりの有効期限は1ヶ月です」
【チェックリスト】信頼できる業者の条件
私が現場で培った経験をもとに、信頼できる業者を見分けるためのチェックリストをご紹介します。
【基本条件】 □ 建設業許可または塗装技能士の資格を持っている □ 施工実績が豊富で、近隣での工事例を見せてもらえる □ 見積書が詳細で、質問に対して明確に回答できる □ 契約を急かさず、検討時間を十分に与えてくれる □ アフターフォローの体制が整っている
【対応の質】 □ 初回訪問時に、外壁の状況を丁寧に調査している □ メリットだけでなく、デメリットも正直に説明している □ 他社との比較を嫌がらない □ 質問に対して、専門用語を使わずに分かりやすく説明している □ 工事の進行状況を定期的に報告してくれる
【技術力の確認】 □ 現地調査で、見えない部分(軒天、破風など)もチェックしている □ 下地処理の重要性について詳しく説明できる □ 使用する塗料の特性を、メリット・デメリット含めて説明できる □ 気象条件による工期の変動について事前に説明している □ 近隣への配慮について具体的な対策を提示している
実例: 私が自宅の外壁塗装で選んだ業者は、初回訪問時に2時間かけて外壁の状況を調査し、写真付きの詳細な報告書を作成してくれました。また、「他社の見積もりも拝見させていただき、疑問点があれば説明いたします」と言ってくれたことが決め手でした。
7. 工事の流れと期間:家族生活への影響を最小限に
外壁塗装工事の詳細スケジュール
外壁塗装工事は、通常2~3週間の期間を要します。しかし、単に工事期間だけでなく、準備段階から完工後のアフターフォローまで含めると、約2ヶ月間のプロセスとなります。私自身の経験と、これまで数多くの現場で見てきた実例をもとに、詳細なスケジュールをご紹介します。
【工事前準備期間:契約から着工まで(2~3週間)】
1週目:契約手続きと詳細打ち合わせ
- 契約書の締結
- 工事日程の最終調整
- 色彩の最終確認(実際のサンプルでの確認)
- 近隣挨拶の段取り
- 工事期間中の生活について詳細打ち合わせ
2~3週目:材料手配と準備
- 指定塗料の手配
- 足場材の準備
- 職人の手配と工程調整
- 天候予報の確認と工程の微調整
私が自宅の工事を行った際、この準備期間に業者から「雨が多い時期なので、予定より3日程度延びる可能性があります」という事前連絡をいただきました。このような配慮は、信頼できる業者の特徴です。
【実際の工事期間:着工から完工まで(10~15日間)】
1~2日目:足場設置・飛散防止シート張り 朝8時頃から作業開始。金属音が発生するため、近隣への挨拶が重要です。我が家では、両隣と向かいの3軒に工事開始の挨拶に伺いました。
作業内容
- 足場の組み立て
- 飛散防止シートの設置
- 作業用電源の確保
- 材料置き場の確保
家族生活への影響
- 午前中は金属音が発生
- 家の周囲が足場で囲まれ、圧迫感がある
- 洗濯物の外干しができなくなる
3日目:高圧洗浄 外壁の汚れやチョーキングを除去する重要な工程です。
作業内容
- 外壁全面の高圧洗浄
- 汚れの状況確認
- 乾燥時間の確保(天候により1~2日)
家族生活への影響
- 水音が一日中続く
- 窓を開けられない(水しぶきが入る可能性)
- エアコンの室外機周辺の作業で、使用に制限が生じる場合
4~5日目:下地処理 塗装の仕上がりと耐久性を左右する、最も重要な工程の一つです。
作業内容
- ひび割れ補修(シーリング材による充填)
- 塗膜の剥がれ部分の除去
- サビ取り作業(鉄部がある場合)
- マスキングテープによる養生
家族生活への影響
- 溶剤系材料の使用により、臭いが発生する場合
- 細かい作業のため、作業音は比較的静か
- 窓や玄関ドアの開閉に制限が生じる場合
6~8日目:下塗り作業 塗装の密着性を高めるための重要な工程です。
作業内容
- 下塗り材の塗布(ローラーまたはスプレー)
- 塗り残しや塗布量の確認
- 乾燥時間の確保
家族生活への影響
- 塗料の臭いが発生
- 換気が制限される
- 作業音は比較的静か
9~11日目:中塗り・上塗り作業 仕上がりの美観と耐久性を決める最重要工程です。
作業内容
- 中塗り材の塗布
- 乾燥時間の確保
- 上塗り材の塗布
- 塗り残しや色ムラの最終確認
家族生活への影響
- 塗料の臭いが最も強くなる時期
- 窓の開閉が困難
- 美しい仕上がりが徐々に見えてくる喜び
12~13日目:付帯部分の塗装 雨樋、破風板、軒天などの付帯部分を塗装します。
作業内容
- 雨樋の塗装
- 破風板・軒天の塗装
- シャッターボックスの塗装
- 玄関庇などの塗装
家族生活への影響
- 細かい作業が多く、作業時間が長くなる場合
- 玄関周辺の作業で、出入りに注意が必要
14~15日目:養生撤去・清掃・検査 工事の仕上げと、お客様による確認作業です。
作業内容
- マスキングテープの撤去
- 飛散防止シートの撤去
- 足場の解体
- 工事箇所の清掃
- お客様立会いでの最終検査
家族生活への影響
- 足場解体時の金属音
- 久しぶりに家全体が見える感動
- 工事完了の安堵感
工事期間中の生活の工夫
【洗濯物対策】 外壁塗装工事期間中は、洗濯物の外干しができません。我が家では以下の対策を講じました。
効果的だった対策
- 浴室乾燥機の活用
- コインランドリーの利用(週2回程度)
- 除湿機能付きエアコンでの室内干し
- 洗濯回数を減らし、まとめ洗いに変更
費用: 約15,000円(2週間のコインランドリー代等)
【換気・臭い対策】 塗料の臭いは、特にお子様やご高齢の方に影響を与える場合があります。
実践した対策
- 空気清浄機の24時間稼働
- 可能な時間帯での短時間換気
- 消臭剤の活用
- 工事期間中の外出時間を増やす
【お子様・ペット対策】 工事期間中は、お子様やペットの安全確保も重要です。
我が家で実践した対策
- 工事時間中の外出機会を増やす(図書館、ショッピングモール)
- 祖父母宅での宿泊(数日間)
- ペット(猫)の一時預かりサービス利用
- 家庭学習環境の整備(静かな部屋の確保)
8. アフターフォローと保証:長期安心のために
保証内容の詳細理解
外壁塗装において、工事完了後の保証は極めて重要です。私自身も5年前の工事で保証の恩恵を受けた経験があります。工事から3年後、台風による強風で一部の塗膜に小さな剥がれが生じましたが、保証により無償で補修していただきました。
【シリコン塗料の一般的な保証内容】
保証期間: 7~10年(業者により異なる)
保証対象となる不具合
- 塗膜の剥離: 正常な使用状況下での塗膜の剥がれ
- 著しい色褪せ: 通常の経年変化を超える色の変化
- チョーキング: 保証期間内の早期チョーキング発生
- 塗膜の割れ: 施工不良による塗膜のひび割れ
保証対象外となるケース
- 自然災害による損傷: 台風、地震、雹害など
- 人為的な損傷: 故意・過失による傷、落書きなど
- 経年劣化: 保証期間経過後の自然な劣化
- メンテナンス不足: 定期清掃を怠った場合の汚れ
【フッ素塗料の一般的な保証内容】
保証期間: 10~15年(一部メーカーでは20年保証も)
保証対象となる不具合 シリコン塗料と基本的に同じですが、保証期間が長く設定されています。ただし、以下の点に注意が必要です。
注意すべきポイント
- 段階的保証: 年数が経過するにつれて保証割合が減少する場合
- 定期点検の義務: 3年ごとの定期点検が保証継続の条件となる場合
- 施工業者の存続: 保証期間中に業者が廃業した場合の対応
実例: 私がお手伝いしたお客様の中に、フッ素塗料で15年保証を受けたものの、10年後に施工業者が廃業し、保証が受けられなくなったケースがありました。業者選びの際は、会社の安定性も重要な判断材料です。
定期メンテナンスの重要性
外壁塗装は、施工後の適切なメンテナンスにより、その効果を最大限に発揮します。私が現場で見てきた中で、メンテナンスを怠ったために保証期間内でも劣化が進んでしまったケースもあります。
【年次点検のチェックポイント】
1年目点検
- 初期不具合の確認: 施工不良による塗膜の異常
- 色の定着確認: 予定通りの色に仕上がっているか
- 付帯部分の確認: 雨樋、破風板などの塗装状況
3年目点検
- 軽微な劣化の確認: 初期のチョーキングや色褪せ
- シーリング材の状況: ひび割れや硬化の進行
- 汚れの付着状況: セルフクリーニング効果の確認
5年目点検
- 中期劣化の評価: 塗膜の密着性、柔軟性の確認
- 部分補修の必要性: 小さな不具合の早期発見
- 次回メンテナンス計画: 将来の工事計画の検討
実践的なメンテナンス方法
日常的にできること
- 月1回の外観チェック: 家の周りを一周して、異常がないか確認
- 年2回の簡易清掃: ホースでの水洗い(高圧洗浄は避ける)
- 汚れの早期除去: 鳥の糞や樹液は早めに除去
- 写真記録: 定期的に同じ角度から写真を撮り、変化を記録
専門業者に依頼すべきこと
- 詳細診断: 3年ごとの専門的な診断
- 部分補修: DIYでは対応困難な補修作業
- 高所作業: 2階部分や屋根周辺の点検・清掃
トラブル発生時の対応方法
外壁塗装でトラブルが発生した場合の適切な対応方法について、私の経験をもとにお伝えします。
【よくあるトラブルと対応方法】
1. 塗装直後の色の違い
症状: 「思っていた色と違う」「サンプルと色が異なる」
対応方法
- まずは業者に連絡し、色の確認を依頼
- 契約書の色指定と実際の仕上がりを比較
- 明らかに契約内容と異なる場合は、塗り直しを要求
- 単なるイメージの相違の場合は、追加費用での変更を検討
予防策: 契約前に大きなサンプル(A4サイズ以上)での色確認
2. 塗膜の早期劣化
症状: 「1~2年でチョーキングが発生」「塗膜が剥がれてきた」
対応方法
- 写真による記録の保存
- 業者への早急な連絡と現地調査の依頼
- 保証書の内容確認
- 必要に応じて第三者機関での調査
3. 工事中の近隣トラブル
症状: 「隣家に塗料が飛散した」「騒音で近隣から苦情があった」
対応方法
- 業者と一緒に近隣への謝罪
- 損害が生じた場合は、業者の保険での対応
- 工事方法の見直しと改善策の実施
私の体験談: 工事3日目に隣家の車に僅かな塗料飛散が発生しました。すぐに業者と一緒に謝罪に伺い、業者の保険で清掃費用を負担していただきました。迅速な対応により、近隣関係を悪化させることなく解決できました。
9. 【実例紹介】成功事例と失敗事例から学ぶ
成功事例:適切な判断で満足度の高い仕上がり
私がこれまでお手伝いしてきた数多くのご家庭の中から、特に参考になる成功事例をご紹介いたします。成功の要因を分析することで、皆様の判断材料としていただければと思います。
【成功事例1】子育て世代・シリコン塗料選択
お客様プロフィール
- ご夫婦(35歳・32歳)+ お子様2人(小学生)
- 千葉県船橋市・築16年の2階建て住宅
- 世帯年収:約650万円
- 外壁塗装予算:80万円以内
選択した内容
- 塗料:シリコン塗料(日本ペイント ファインシリコンフレッシュ)
- 工事費用:78万円
- 工期:12日間
成功要因の分析
1. 明確な予算設定 最初から「子どもの教育費を考えると、80万円が上限」と明確に伝えられました。この潔い判断が、適切な塗料選択につながりました。
2. 複数業者との比較検討 5社から見積もりを取得し、価格だけでなく提案内容も詳細に比較されました。最終的に選んだ業者は価格は中間でしたが、提案力と誠実さが決め手でした。
3. 家族全員での合意形成 お子様にも工事の必要性を説明し、期間中の生活の変化について事前に話し合いをされていました。
結果 工事から3年経過した現在も美しい状態を保ち、「あの時の判断は正しかった」と満足されています。次回の塗り替え時期(築28年頃)には、お子様も大学を卒業予定で、フッ素塗料も検討できる家計状況になる見込みです。
【成功事例2】シニア世代・フッ素塗料選択
お客様プロフィール
- ご夫婦(62歳・59歳)
- 神奈川県横浜市・築18年の2階建て住宅
- 住宅ローン完済済み・年金受給前
- 外壁塗装予算:150万円以内
選択した内容
- 塗料:フッ素塗料(関西ペイント アレスダイナミックフッソ)
- 工事費用:135万円
- 工期:14日間
成功要因の分析
1. 長期的な視点での判断 「これが最後の外壁塗装になる可能性が高い」という明確な認識のもと、初期費用よりも長期的な安心感を重視されました。
2. 資金計画の余裕 住宅ローン完済後で、子どもも独立済み。年金受給前の収入が安定している時期に工事を実施されました。
3. 住環境に適した選択 海から3kmの立地で、近くに工場もあるため、厳しい環境条件を考慮してフッ素塗料を選択されました。
結果 工事から4年経過した現在、新築時のような美しさを保っています。「孫が遊びに来るたびに『おじいちゃんの家、きれい!』と言ってくれるのが嬉しい」とお喜びいただいています。
【成功事例3】共働き世代・環境配慮型選択
お客様プロフィール
- 共働きご夫婦(42歳・39歳)+ お子様1人(中学生)
- 東京都世田谷区・築14年のマンション型住宅
- 世帯年収:約900万円
- 外壁塗装予算:120万円以内
選択した内容
- 塗料:高機能シリコン塗料(超低汚染・遮熱機能付き)
- 工事費用:115万円
- 工期:13日間
成功要因の分析
1. 機能性と経済性のバランス フッ素塗料も検討されましたが、遮熱機能付きの高機能シリコン塗料により、エアコン代の節約効果も期待できる選択をされました。
2. 工事時期の配慮 お子様の受験期を避け、夏休み期間中に工事を実施。家族全員が外出しやすい時期を選択されました。
3. 近隣への配慮 密集住宅地のため、事前の近隣挨拶を徹底し、工事期間中も定期的にお声かけをされました。
結果 遮熱効果により夏場のエアコン代が約15%削減され、年間約2万円の光熱費節約を実現。「機能性も経済性も両立できて満足」とのご感想をいただいています。
失敗事例:教訓として活かしたい判断ミス
成功事例だけでなく、残念ながら満足いく結果にならなかった事例もあります。これらの失敗から学ぶことで、同じ過ちを避けていただければと思います。
【失敗事例1】価格重視で品質を軽視
お客様プロフィール
- ご夫婦(45歳・43歳)+ お子様2人(高校生・中学生)
- 埼玉県さいたま市・築17年の2階建て住宅
- 外壁塗装予算:できるだけ安く
選択した内容
- 最安値業者(相場の60%程度の価格)
- 塗料:低品質シリコン塗料
- 工事費用:55万円
- 工期:7日間(通常の半分)
失敗の内容と原因
1. 下地処理の手抜き 本来必要な下地処理(ひび割れ補修、古い塗膜の除去)が不十分で、2年後に塗膜の剥離が発生しました。
2. 塗装回数の不足 3回塗りが基本のところ、2回塗りで済まされていたことが後日判明しました。
3. 使用塗料の品質問題 契約書には「シリコン塗料」とありましたが、実際は低品質な塗料が使用されていました。
結果と教訓 工事から3年後、大幅な塗り直しが必要となり、結果的に相場以上の費用がかかりました。「安物買いの銭失い」という言葉を実感されたとのことです。
教訓
- 異常に安い見積もりには必ず理由がある
- 価格だけでなく、工事内容の詳細確認が重要
- 「安いから」という理由だけでの業者選択は危険
【失敗事例2】オーバースペックな選択
お客様プロフィール
- ご夫婦(38歳・36歳)+ お子様1人(小学生)
- 神奈川県藤沢市・築12年の2階建て住宅
- 外壁塗装予算:特に制限なし
選択した内容
- 塗料:最高級フッ素塗料(25年保証)
- 工事費用:180万円
- 工期:16日間
失敗の内容と原因
1. 住み替えによる投資回収不能 工事から5年後、転勤により住み替えが決定。高額な投資を回収できませんでした。
2. 住環境に対するオーバースペック 良好な住宅地で、最高級塗料の性能を活かしきれない環境でした。
3. 家計への過度な負担 その後の子どもの教育費や住宅ローンの負担が重くなり、「もう少し堅実な選択をすれば良かった」と後悔されています。
結果と教訓 住み替えに際して、外壁塗装による資産価値向上効果は限定的でした。
教訓
- 将来の住み替え予定も考慮した塗料選択が重要
- 高価格 = 最適解ではない
- ライフプランに応じた適正な投資額の設定が必要
【失敗事例3】業者選択の判断ミス
お客様プロフィール
- ご夫婦(52歳・49歳)
- 千葉県柏市・築19年の2階建て住宅
- 外壁塗装予算:100万円程度
選択した内容
- 訪問販売業者(大手チェーン系)
- 塗料:フッ素塗料
- 工事費用:150万円(大幅値引き後)
- 工期:10日間
失敗の内容と原因
1. 契約内容の不明確さ 「フッ素塗料」としか記載されておらず、具体的な製品名や仕様が不明でした。
2. 追加工事の連続 工事開始後、「予想以上に劣化が激しい」との理由で、次々と追加工事を提案され、最終的に200万円を超えました。
3. アフターフォローの不備 工事完了から1年後、軽微な不具合について連絡したところ、「保証対象外」として対応を拒否されました。
結果と教訓 高額な費用を支払ったにも関わらず、期待した品質と保証が得られませんでした。
教訓
- 訪問販売業者との契約は慎重に
- 契約内容の詳細確認が重要
- 地元密着型業者との比較検討が必要
成功のための5つの原則
これらの事例分析から導かれる、外壁塗装成功のための原則をまとめます。
【原則1】予算設定の明確化 家計状況とライフプランを考慮した現実的な予算設定が、適切な塗料選択の第一歩です。
【原則2】複数業者との比較検討 最低3社、できれば5社からの見積もり取得により、適正価格と品質を見極めます。
【原則3】住環境に応じた選択 立地条件、気候条件、住宅の構造に適した塗料選択が重要です。
【原則4】将来計画の考慮 住み替え予定、家族構成の変化、収入の見通しなど、長期的な視点での判断が必要です。
【原則5】信頼できる業者の選択 価格だけでなく、技術力、誠実さ、アフターフォロー体制を総合的に評価します。
10. まとめ:あなたに最適な選択をするために
最終判断のためのチェックリスト
ここまで、シリコン塗料とフッ素塗料の詳細な比較をしてまいりました。最後に、皆様が最適な選択をするための総合的なチェックリストをご用意いたします。私自身も5年前に、このような整理をして判断を下しました。
【家計・予算面でのチェック】
□ 現在の家計状況で無理のない予算設定ができているか
- 住宅ローン残高と月々の返済額
- お子様の教育費計画
- 緊急時の備蓄資金確保
□ 20年間のトータルコストを計算したか
- シリコン塗料:2回施工の総額
- フッ素塗料:1回施工+部分メンテナンス費用
- 物価上昇率の考慮
□ 資金調達方法は適切か
- 現金一括払いの可能性
- リフォームローンの金利負担
- 他のリフォーム計画との優先順位
【住環境・立地条件でのチェック】
□ 住宅の立地条件を正確に把握しているか
- 海からの距離(塩害リスク)
- 交通量の多さ(排気ガス影響)
- 工業地帯の近さ(化学物質影響)
- 日当たり条件(紫外線量)
□ 現在の外壁の劣化状況を確認したか
- チョーキングの進行度
- ひび割れの有無と程度
- 色褪せの状況
- コケ・カビの発生状況
□ 近隣環境への配慮は十分か
- 工事期間中の騒音対策
- 飛散防止対策
- 駐車場確保の問題
【ライフプラン面でのチェック】
□ 今後20年間の住居予定は明確か
- 転勤の可能性
- 住み替えの予定
- 二世帯住宅への改築予定
- 子どもの独立後の住まい方
□ 家族構成の変化を考慮しているか
- お子様の進学・就職時期
- ご両親との同居可能性
- 家族の健康状態の変化
□ 収入の見通しは立っているか
- 定年退職時期
- 年金受給開始時期
- 配偶者の就業予定
【品質・性能面でのチェック】
□ 求める性能レベルは明確か
- 美観維持の重要度
- メンテナンス頻度の許容範囲
- 耐久性への期待値
□ 業者選択の基準は適切か
- 施工実績の確認
- 資格・許可の有無
- 保証内容の理解
- 近隣での評判
□ 使用材料の詳細を把握しているか
- 具体的な塗料メーカー・商品名
- 塗装回数と塗布量
- 下地処理の内容
塗料別推奨パターンの最終まとめ
【シリコン塗料を強く推奨するケース】
1. 30代子育て世代
- 教育費負担が重い時期
- 住み替えの可能性がある
- 初回の外壁塗装で経験を積みたい
- 予算は80万円以下が現実的
2. 良好な住環境
- 住宅地の閑静な立地
- 海や工場から離れている
- 南面道路で日当たり良好
- 近隣に高い建物がない
3. リスク回避重視
- 初期費用を抑えたい
- 業者選択で失敗したくない
- 10年後に改めて検討したい
- 他のリフォームも予定している
推奨する具体的な塗料グレード
- スタンダードグレード:日本ペイント ファインシリコンフレッシュ
- プレミアムグレード:関西ペイント アレスシリコンフレックス
- 高機能グレード:エスケー化研 エスケープレミアムシリコン
【フッ素塗料を強く推奨するケース】
1. 50代以上の世代
- 住宅ローン完済済み
- 子どもが独立している
- 今後20年以上同じ家に住む予定
- 年収800万円以上の安定収入
2. 厳しい住環境
- 海岸から3km以内
- 工業地帯に立地
- 交通量の多い道路沿い
- 強風地域や豪雨地域
3. 美観・品質重視
- 外観の美しさにこだわりたい
- メンテナンス頻度を減らしたい
- 資産価値の維持が重要
- 初期費用よりも長期安心感を優先
推奨する具体的な塗料グレード
- エントリーモデル:日本ペイント ファイン4Fセラミック
- スタンダードモデル:関西ペイント アレスダイナミックフッソ
- プレミアムモデル:エスケー化研 エスケープレミアムフッソ
契約前の最終確認事項
実際に契約を結ぶ前に、必ず確認していただきたい重要事項をまとめます。私自身の経験と、数多くのトラブル事例から学んだ教訓です。
【契約書面での確認事項】
1. 工事内容の詳細記載
- 使用塗料の具体的な商品名
- 塗装面積の測定根拠
- 塗装回数と各工程の詳細
- 下地処理の具体的内容
- 付帯部分の塗装範囲
2. 費用の明細と支払い条件
- 材料費と人件費の内訳
- 追加工事が発生する条件
- 支払いタイミング
- ローン利用時の条件
3. 工期と工事条件
- 天候による工期延長の取り扱い
- 近隣への配慮事項
- 工事期間中の生活制限
- 完成検査の方法
4. 保証内容の詳細
- 保証期間と保証範囲
- 定期点検の必要性
- 保証が無効になる条件
- 業者が廃業した場合の対応
5. 緊急時の対応方法
- 工事中の事故対応
- 近隣トラブルの対応
- 天災による被害の取り扱い
- 連絡体制と責任者
【口約束に頼らない確認方法】
すべての重要事項について、口約束ではなく書面での確認を求めてください。私が現場で見てきたトラブルの多くは、「言った・言わない」の問題から発生しています。
書面化すべき事項
- 色の最終確認(カラーサンプルの添付)
- 追加工事の判断基準と価格
- 工事期間中の生活への配慮事項
- アフターフォローの具体的内容
私からの最後のメッセージ
外壁塗装は、単なる住宅メンテナンスではありません。ご家族の快適な生活と、大切な資産を守るための重要な投資です。私自身も5年前の選択を振り返り、改めてその重要性を実感しています。
シリコン塗料かフッ素塗料か、という選択に正解はありません。大切なのは、ご家族の現在の状況と将来の計画に最も適した選択をすることです。
この記事が、皆様の判断の一助となり、後悔のない外壁塗装を実現していただけることを心より願っています。外壁塗装を通じて、ご家族のさらなる幸せな時間が築かれることを信じております。
最後に、私からの3つのお約束
- 焦らず、慎重に判断してください:外壁塗装は急ぐ必要のない工事です。十分に検討し、納得のいく選択をしてください。
- 複数の意見を聞いてください:この記事だけでなく、複数の専門家や業者から意見を聞き、多角的に判断してください。
- ご家族で話し合ってください:外壁塗装は家族全員に影響する決定です。みんなで話し合い、全員が納得できる選択をしてください。
皆様の外壁塗装が成功し、美しく快適な住まいで、末永く幸せな時間を過ごされることを心よりお祈りいたします。
筆者プロフィール 一級建築士 / 住まいリフォームアドバイザー リフォーム会社で10年間現場監督として従事後、現在は住まいメディアの編集者として活動。自身の外壁塗装経験と、数百件の現場経験をもとに、読者の立場に立った情報発信を心がけている。「家を通じて家族の毎日を笑顔にしたい」をモットーに、後悔しないリフォームのお手伝いを続けている。