外壁塗装をご検討中の皆様、塗料の「ツヤあり」と「ツヤなし」でお悩みではありませんか?
「新築のような輝きにしたいけど、安っぽく見えるのは嫌」「落ち着いた仕上がりにしたいけど、耐久性が心配」など、多くの方が同じような悩みを抱えていらっしゃいます。
実際に当編集部にも「業者からツヤありをすすめられたけど、本当に良いの?」「ツヤなしは汚れやすいって聞いたけど大丈夫?」といったご相談が数多く寄せられています。
外壁塗装は10年に一度の大切な投資です。だからこそ、ツヤの違いをしっかりと理解して、ご自宅に最適な選択をしていただきたいと思います。
この記事では、塗料のツヤについて、性能面から見た目まで詳しく解説いたします。また、悪徳業者に騙されないためのポイントもお伝えしますので、安心して外壁塗装を進めていただけるでしょう。
塗料の「ツヤ」とは何か?基本知識を理解しよう
ツヤの正体は「光沢」
塗料の「ツヤ」とは、塗膜表面の光沢のことを指します。光が塗膜に当たった際に、どの程度反射するかによってツヤの有無や程度が決まります。
ツヤありの塗膜は表面が滑らかで、光を鏡のように反射します。そのため、ピカピカとした光沢のある仕上がりになります。
一方、ツヤなしの塗膜は表面に細かな凹凸があり、光があらゆる方向に散乱します。これにより、マットで落ち着いた質感になります。
グロス値による科学的な測定
ツヤの程度は「グロス値」という数値で科学的に測定されます。これは、塗膜に60度の角度で光を当て、反射する光の量をパーセンテージで表したものです。
グロス値 | 分類 | 見た目の特徴 |
---|---|---|
70%以上 | ツヤあり(全ツヤ) | 新築のような輝き |
55~65% | 7分ツヤ | 上品な光沢 |
30~45% | 5分ツヤ(半ツヤ) | 程よい艶感 |
10~25% | 3分ツヤ | 控えめな艶 |
5%以下 | ツヤなし(艶消し) | マットな質感 |
業界での表記の違いについて
実は、塗装業界にはツヤについての明確な統一基準がありません。そのため、同じ「5分ツヤ」でも塗料メーカーによって実際のツヤ感が異なることがあります。
これは塗料選びの際に注意すべきポイントです。必ず実際の色見本でツヤ感を確認することをおすすめします。
ツヤありとツヤなしの決定的な違い
塗膜の表面構造の違い
ツヤあり塗料の塗膜は表面が非常に滑らかで、顕微鏡レベルでも凹凸がほとんどありません。この滑らかさが光の正反射を生み出し、輝きを作り出します。
ツヤなし塗料の塗膜は、ツヤ消し剤(添加剤)の影響で表面に微細な凹凸が形成されます。この凹凸が光を乱反射させ、マットな質感を生み出します。
製造方法の違い
多くの塗料は基本的にツヤありベースで製造されています。ツヤなし塗料は、このツヤあり塗料にツヤ消し剤を混ぜることで作られることが一般的です。
ただし、最初からツヤなしとして開発された塗料も存在します。これらは後から添加剤を混ぜたものとは性能が異なる場合があります。
色の見え方の違い
同じ色でも、ツヤの有無によって見え方が大きく変わります。
ツヤあり塗料は光の反射により、色が濃く鮮やかに見えます。特に濃い色では、この効果がより顕著に現れます。
ツヤなし塗料は光の乱反射により、どの角度から見ても一定の明るさに見えます。そのため、色がやや淡く、柔らかい印象になります。
ツヤありのメリット・デメリット
ツヤありのメリット
1. 優れた耐久性
ツヤあり塗料は塗料本来の性能をそのまま発揮できるため、高い耐久性を期待できます。当編集部の調査では、同じ塗料でもツヤありの方が1~2年程度長持ちする傾向があることが分かっています。
2. 汚れにくさ
表面が滑らかなため、汚れが付着しにくく、雨で汚れが流れ落ちやすい特性があります。これは「セルフクリーニング効果」と呼ばれ、外壁の美観を長期間保つのに役立ちます。
3. 豊富な色の選択肢
塗料メーカーの主力商品はツヤありが中心のため、色のバリエーションが豊富です。希望の色が見つかりやすいでしょう。
4. 新築感の再現
新築時のような輝きを取り戻すことができ、住まいが生まれ変わったような実感を得られます。
ツヤありのデメリット
1. 安っぽく見える場合がある
光沢が強すぎると、特に明るい色では安っぽく見える場合があります。周囲の建物との調和も考慮する必要があります。
2. ツヤの経年劣化
ツヤは2~3年程度で徐々に失われていきます。そのため、ツヤを楽しめる期間は限定的です。
3. 傷や汚れが目立ちやすい
表面が滑らかなため、小さな傷や汚れが目立ちやすくなることがあります。
ツヤなしのメリット・デメリット
ツヤなしのメリット
1. 高級感のある仕上がり
マットな質感は上品で落ち着いた印象を与え、高級感を演出できます。特に和風建築や自然素材との相性が良好です。
2. 長期間安定した外観
元々ツヤがないため、経年によるツヤの変化がありません。塗り立ての風合いを長期間楽しむことができます。
3. 周囲との調和
住宅街では、ツヤなしの方が周囲の建物と調和しやすく、上品な印象を与えます。
4. 施工時の仕上がりの良さ
ハケ跡やローラー跡が目立ちにくく、施工不良をカバーしやすいという特徴があります。
ツヤなしのデメリット
1. 耐久性の低下
添加剤を混ぜることで塗料本来の性能が若干低下し、耐久年数が1~2年程度短くなる可能性があります。
2. 汚れの付着しやすさ
表面の凹凸に汚れが入り込みやすく、一度付着した汚れは落ちにくくなります。
3. 色の選択肢の制限
ツヤなし対応の塗料は限られているため、希望の色が選べない場合があります。
4. コストアップ
添加剤の分だけ、ツヤありよりも若干コストが高くなる傾向があります。
性能面での徹底比較
耐久性の違い
編集部が塗料メーカー各社にヒアリングした結果、一般的にツヤありの方が耐久性に優れることが確認されています。
比較項目 | ツヤあり | ツヤなし |
---|---|---|
耐候性 | 優秀 | やや劣る |
耐久年数 | メーカー保証通り | 1~2年短い可能性 |
紫外線耐性 | 高い | やや低い |
塗膜の安定性 | 安定 | 添加剤の影響で若干不安定 |
汚れ耐性の比較
実際の施工現場での長期観察結果から、以下のような傾向が見られます。
ツヤあり塗料は表面が滑らかなため、砂ホコリや排気ガスなどの汚れが付着しにくく、雨水で汚れが流れ落ちやすい特性があります。
ツヤなし塗料は表面の凹凸に汚れが入り込みやすく、特に手垢や油性の汚れは除去が困難になる場合があります。
メンテナンス性の違い
長期的なメンテナンスを考えると、ツヤありの方が有利です。汚れが付きにくく、高圧洗浄などでの清掃効果も高くなります。
ツヤなしは汚れが付きやすい反面、軽微な傷や色あせが目立ちにくいため、見た目の劣化は穏やかに進行します。
住宅のタイプ別おすすめ選択
モダン・現代風住宅
シンプルでスタイリッシュなデザインの住宅には、ツヤありがおすすめです。特に白やグレーなどのモノトーンカラーとの相性が良く、洗練された印象を演出できます。
ただし、明るすぎる色の場合は7分ツヤ程度に抑えることで、上品さを保ちながら現代的な仕上がりにできます。
和風・自然素材住宅
木材や漆喰などの自然素材を多用した住宅には、ツヤなしがおすすめです。マットな質感が自然素材と調和し、上品で落ち着いた印象を作り出します。
色も茶系やベージュ系など、自然な色合いを選ぶことで、より一層の調和を図れます。
洋風・南欧風住宅
南欧風の住宅には、使用する色によって選択を変えることをおすすめします。
- 明るい色(白、クリーム色): 3分ツヤ~5分ツヤ
- 濃い色(テラコッタ、濃茶): ツヤあり
住宅密集地
住宅密集地では周囲との調和が重要です。一般的に5分ツヤ~ツヤなしが無難な選択となります。
あまりに光沢が強いと周囲から浮いてしまう可能性があります。事前に周辺の住宅を観察し、調和の取れる仕上がりを選びましょう。
失敗しない選び方のポイント
実際の色見本で確認する
塗料を選ぶ際は、必ずA4サイズ以上の色見本で確認しましょう。小さなサンプルでは、実際の仕上がりとの差が生じやすくなります。
色見本では以下の点を確認してください:
- ツヤの程度
- 色の見え方
- 周囲の環境との調和
- 時間による見え方の変化
試し塗りの活用
可能であれば、実際の外壁に試し塗りをしてもらいましょう。特に以下の条件で確認することが重要です:
- 晴天時の見え方
- 曇天時の見え方
- 朝・昼・夕方の光の当たり方
近隣施工例の確認
検討中の塗料で実際に施工された住宅があれば、見学させてもらいましょう。写真では分からない実際の質感や、経年変化の様子を確認できます。
専門家との相談
信頼できる塗装業者や建築士との相談は欠かせません。住宅の構造、立地条件、ライフスタイルを総合的に考慮したアドバイスを受けることで、最適な選択ができます。
地域・環境による選び方
海沿い地域
塩害の影響を受けやすい海沿い地域では、ツヤありの高耐久塗料がおすすめです。塩分による劣化に対する抵抗力が高く、汚れも落ちやすいためメンテナンスが容易です。
工業地域・交通量の多い地域
排気ガスや工業排出物による汚れが付きやすい地域では、ツヤありの低汚染塗料を選択しましょう。汚れが付着しにくく、付着しても除去しやすいため、美観を長期間保てます。
山間部・森林地域
自然環境に恵まれた地域では、ツヤなしや3分ツヤがおすすめです。自然との調和を重視し、派手すぎない仕上がりが適しています。
ただし、湿度が高い地域では、汚れが付きやすいツヤなしよりも、若干ツヤのある3分ツヤの方が良い場合もあります。
都市部住宅地
都市部の住宅地では、5分ツヤ程度が最も無難な選択です。周囲との調和を保ちながら、適度な美観を維持できます。
業者選びで失敗しないために
悪徳業者の見分け方
外壁塗装業界には残念ながら悪質な業者も存在します。以下のような特徴のある業者には注意が必要です:
危険な営業手法
- 訪問販売での契約急迫:「今日契約すれば特別価格」など
- 不安を煽る営業:「このままでは大変なことになる」など
- 大幅な値引き:「実績作りのため半額にします」など
不適切な提案
- 根拠のない耐久年数:「この塗料は30年持ちます」など
- オリジナル塗料の過度な宣伝:技術的根拠のない自社開発品
- ツヤの選択について説明しない:「ツヤはお任せください」など
信頼できる業者の特徴
適切な資格・許可の保有
- 塗装技能士:国家資格による技術力の証明
- 建設業許可:500万円以上の工事に必要な許可
- 各種保険への加入:工事中の事故に対する保障
丁寧な説明と提案
- ツヤの違いを詳しく説明
- メリット・デメリットを公平に説明
- 実際の施工例を提示
- 見積書の内容が詳細
アフターフォロー体制
- 保証内容の明確化
- 定期点検の実施
- 迅速な対応体制
見積もり時のチェックポイント
見積書には以下の項目が明記されているか確認しましょう:
- 塗料の種類・メーカー名
- ツヤの程度
- 塗布回数
- 使用量
- 施工工程
- 保証内容
よくある質問と編集部の回答
Q: ツヤは後から変更できますか?
A: 基本的には困難です。ツヤありからツヤなしへの変更は、全面的な塗り替えが必要になります。ただし、ツヤなしからツヤありへの変更は、クリア塗料の重ね塗りで可能な場合があります。
Q: ツヤありの方が高いのですか?
A: 実は逆で、ツヤなしの方が若干高くなることが多いです。これは、ツヤ消し剤という添加剤のコストが加わるためです。ただし、塗料の種類によっては価格差がない場合もあります。
Q: 部分的にツヤを変えることはできますか?
A: 技術的には可能ですが、境界部分の仕上がりに問題が生じる可能性があります。また、将来のメンテナンス時に複雑になるため、一般的にはおすすめできません。
Q: ツヤの違いで寿命にどの程度差が出ますか?
A: 当編集部の調査では、同じ塗料でもツヤありの方が1~2年程度長持ちする傾向があります。ただし、使用環境や塗料の種類によって差は変わります。
Q: DIYでツヤを調整できますか?
A: 専門知識と技術が必要なため、DIYでの調整はおすすめできません。適切な比率で混合しないと、期待した仕上がりにならない可能性があります。
編集部が実際に体験したケーススタディ
ケース1:現代住宅でのツヤあり選択
東京都内の築15年のモダン住宅での塗り替え事例です。
選択した仕様:
- 塗料:シリコン系塗料(ツヤあり)
- 色:ホワイト系
結果: 新築時のような輝きが戻り、ご家族も大変満足されていました。近隣からも「きれいになりましたね」とお声かけいただいたそうです。
ただし、2年後に訪問した際は、ツヤが若干落ち着いており、かえって上品な印象になっていました。
ケース2:和風住宅でのツヤなし選択
神奈川県内の築20年の和風住宅での事例です。
選択した仕様:
- 塗料:ウレタン系塗料(ツヤなし)
- 色:ベージュ系
結果: 自然素材との調和が取れた、上品な仕上がりになりました。5年経過した現在も、塗り立て時の風合いを保っています。
ただし、北側の壁面には若干の汚れが目立つようになってきました。
ケース3:失敗例から学ぶ
千葉県内の住宅で、業者の提案を鵜呑みにしてツヤありを選択した事例です。
問題点:
- 周囲との調和を考慮していなかった
- 明るすぎる色でツヤありにしたため、安っぽく見えた
- 事前の色見本確認が不十分だった
学んだこと: 事前の十分な検討と、実際の施工例確認の重要性を痛感しました。
まとめ:あなたに最適な選択をするために
外壁塗装における塗料のツヤ選びは、見た目だけでなく性能や維持管理にも大きく影響する重要な決定です。
ツヤありを選ぶべき方:
- 耐久性を最優先したい
- 新築のような輝きを求めている
- モダンな住宅にお住まい
- 汚れやすい環境にある
ツヤなしを選ぶべき方:
- 上品で落ち着いた仕上がりを求めている
- 和風・自然素材の住宅にお住まい
- 周囲との調和を重視したい
- 長期間安定した外観を維持したい
中間のツヤを選ぶべき方:
- ツヤありとツヤなしの良いところを取りたい
- 住宅密集地にお住まい
- 初めての外壁塗装で迷っている
何より大切なのは、信頼できる業者と十分に相談し、実際の施工例や色見本で確認することです。
外壁塗装は10年に一度の大きな投資です。この記事を参考に、ぜひ納得のいく選択をしていただき、美しい住まいを長期間保ってください。
最後に、塗料選びで迷った際は、複数の専門業者に相談し、セカンドオピニオンを求めることをおすすめします。適切な選択により、あなたの大切な住まいがより美しく、長持ちすることを心から願っています。
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